重層的支援体制整備事業の取り組みについて

更新日:2025年05月04日

重層的支援事業とは

近年、住民の皆さまが抱える課題は、複雑かつ複合的になってきています。こうした状況に対応するため、既存の高齢者・障がい者・子ども・生活困窮者に対する相談支援の取り組みを活かしながら、「属性を問わない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に進める仕組みとして、「重層的支援体制整備」を推進しています。

この体制では、どのような課題を抱えていても、住民の皆さまが地域の中で安心して暮らし続けられるよう、相談支援を通じた地域づくりを進めてまいります。

住民一人ひとりが地域の一員として尊重され、共に支え合う社会の実現を目指して、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

なお、斜里町ではこの「重層的支援体制整備」の取り組みを、町の最上位計画である**「第7次斜里町総合計画」**においても位置付けており、地域共生社会の実現に向けた方針として明確に示しています。

第7次斜里町総合計画(令和6年~令和15年度)/斜里町

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事業の展開・概要について

斜里町では、「人へのアプローチ」と「地域へのアプローチ」の両輪による支援体制の構築をめざしています。

その基本となるのが、

  • 包括的相談支援業務(地域包括支援センター等での日々の相談対応)

  • アウトリーチや居場所づくりなどを通じた継続支援
    です。

こうした活動を通じて、生活に困っている方や、地域における“困りごと”の声を拾い上げています。特に、複雑化・複合化した課題を抱えるケースや、まだ表面化していない潜在的な困りごとについては、「多機関協働事業」として、関係機関とともに支援の方向性を検討しています。

具体的には、

  • 地域支援会議

  • 重層支援会議
    と段階的にケースを共有・協議し、必要な地域資源につなげながら、支援の継続的な見守り(モニタリング)を行っています。

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住民参加型の社会問題井戸端会議(シャリバタ会議)

また、日々の支援活動から見えてきた個別の課題や地域課題については、住民と共有する機会として
「社会問題井戸端会議『シャリバタ会議』」を開催。ここでは住民が主体となって意見を交わし、新たな提案やプロジェクトが生まれます。町や福祉団体などのプレイヤーがそのプロジェクトに伴走することで、実現に向けて一緒に取り組んでいます。

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空き家から始まる共生のかたち

このようなプロセスから生まれた成果の一つが、空き家を活用して創設した多世代交流拠点「中斜里シャトラン」です。

斜里町では、こうした地域資源の開拓や、個別の課題と資源のマッチングを通じて、住民の興味や関心を引き出し、地域課題の解決に向けたプロジェクトへと発展させていけるよう、住民が“参加しやすくなる”ための仕掛け『参加支援事業』にも取り組んでいます。

このように、人と地域の両面から支援を行い、それぞれが循環・連動することで、誰もが安心して暮らし続けられる地域共生社会の実現をめざしています。

多世代交流拠点「中斜里シャトラン」について

斜里町では、重層的支援体制整備事業の一環として、地域づくりの視点から中斜里地域にある空き家を改修し、地域交流拠点「中斜里シャトラン」を整備しました。

この拠点は、地域に根差した居場所づくりと住民同士のつながりを生む場として機能しており、町からの委託を受けて民間事業所「トコラボ」が運営を担い、常駐スタッフとして「地域おこし協力隊」が活動しています。

「シャトラン」を拠点としたアウトリーチを基本に、これまで支援が届きにくかった方々にも寄り添いながら、重層的支援の取り組みを展開しています。

拠点では、地域住民の皆さんの「やってみたい」という主体的な思いを大切にしながら、さまざまな交流イベントを定期的に開催しています。なかでも「夕方食堂」では、子どもから大人、高齢者まで多世代が集まり、食事を通じて自然な交流と団らんが生まれる、あたたかな雰囲気が広がっています。

活動の様子は、下記のInstagramや運営団体トコラボのホームページでもご紹介しています。ぜひご覧ください。

中斜里シャトラン インスタグラム

TOCO.LABO. とこらぼ【斜里町】人と人、人と地域をつなぐ研究をしています。

重層的支援体制整備事業に携わる地域のプレイヤーたち

斜里町では、「重層的支援体制整備事業」を進めるにあたり、これまで取り組んできた福祉関連の既存事業(基本事業)を基盤としながら、新たな視点で地域に向けた取り組みを重ね合わせる形で、事業を展開しています。

たとえば、地域支援事業では、

  • 「生活支援コーディネーター」

  • 「認知症地域支援推進員」

といった専門職が、民間事業所の協力のもとで、地域福祉の推進に取り組んでいます。

また、地域づくりの面では、多世代地域交流拠点(居場所)の運営を中心に、

  •    「地域おこし協力隊」

を起用し、住民との交流や地域活動の支援を進めています。

このように、福祉の視点と地域づくりの視点が交わる現場には、さまざまな立場で活躍する“地域のプレイヤー”がいます。それぞれの専門性や役割を活かしながら、住民に寄り添い、地域に根ざした支援とつながりの場を生み出しています。

ここでは、そんな地域づくり・支え合いに関わる人たちに、少し焦点を当ててご紹介していきます。

地域おこし協力隊 ~「ちょっとやってみよう」の気持ちに寄り添う地域の伴走者~

中斜里地域にある多世代交流拠点「中斜里シャトラン」は、住民参加型の対話イベント「シャリバタ会議」から生まれたプロジェクトの一つです。住民からの提案に対して、町や福祉団体、地域のプレイヤーが伴走し、空き家を改修して“居場所”としての機能をもたせた取り組みです。

この居場所には、地域おこし協力隊の隊員が常駐スタッフとして関わっています。

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協力隊員は、日々の活動を通して住民の「こんなことをやってみたい」という声に耳を傾け、実現可能なものから小さなイベントや交流の場として形にしています。また、町内各地の自治会と連携し、その地域に出向いて一時的に居場所空間を提供する「お試しシャトラン」の取組も実施。こうした取り組みを通じて、地域に潜在する課題を掘り起こし、町全体の課題解決へとつなげています。

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協力隊員たちは、地域課題に対して

  • 実際にやってみる(実証)

  • 結果を振り返り、構造化する
    といったプロセスを繰り返しながら、住民の「想い」に寄り添った支援を行っています。

「こうしたらどうだろう?」「ちょっとやってみませんか?」といった、柔らかく前向きな声かけで、住民の参加のハードルを下げ、共に考え、動いていく姿勢は、まさに地域づくりの原動力です。

協力隊員の中には、
「地域づくりや居場所づくりが、住民の生活の動線を調える一助になれば」
「地域にはたくさんの魅力がある。その良さをもっと自慢したい」
といった熱い想いを持って活動しています。

こうした協力隊員の熱量は、地域に新たな風を吹き込み、住民主体の地域づくりを力強く後押ししています。

生活支援コーディネーター ~地域の“ちょっとした困りごと”をつなぐ調整役~

生活支援コーディネーターは、地域の中で高齢者をはじめとする住民の「ちょっと困った」「誰か手を貸してくれたら助かる」といった日常の困りごとに対して、支援の仕組みを整える役割を担っています。

斜里町では、民間事業所との協働により、生活支援コーディネーターが常に地域とつながりながら活動しています。地域で起きている小さな声に耳を傾け、その声をもとに支援の担い手(ボランティア、事業者、地域団体など)とつなぎ、支援のマッチングや仕組みづくりを進めています。

たとえば――

  • 交流の場づくりや外出機会の創出

  • 支え合い活動の立ち上げ支援

など、地域のなかで「できること」「やってみたいこと」を集め、調整し、形にしていく“縁の下の力持ち”です。

住民一人ひとりの生活が、地域のなかで支えられるように。
生活支援コーディネーターは、人と人、活動とニーズをつなぐ大切な役割を担っています。

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しゃりゆめのまちプロジェクトは、住民の「やってみたい」声を集め、その想いが実現に向かうようにサポートし、住民自身が主体的に関わっていけるようにつなげていく取り組みです。

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ウトロ地域交流「ウトみん」

ワークショップの様子、このほか地域食堂や古本古着の回収(あなたの「いらない」を誰かの「いる」に…)しました。

認知症地域推進委員 ~認知症になっても安心して暮らせる町へ~

認知症地域支援推進員は、認知症のある方やそのご家族が、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、地域の理解を広げ、支える仕組みづくりを担っています。

斜里町では、医療・介護・地域団体などと連携し、様々な取り組みを進めています。

  • 認知症に関する相談支援

  • 地域住民向けの講座や認知症サポーター養成講座の開催

  • 認知症の方への見守りや声かけ訓練の企画 など

地域全体で、認知症を特別なことではなく、身近なこととして受けとめあい、さりげない支え合いが広がっていくように、推進員は、人と人とをやわらかくつなぐ「橋渡し役」として、日々の対話や関わりを大切にしながら活動しています。

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2024年9月14日 認知症スマイルセミナー

講師:網走脳神経クリニック 院長 藤田 力 氏

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重層事業の各種取り組みについて

多機関協働事業

地域包括支援センターなどでの日々の相談対応を通じた「包括的相談支援業務」と、訪問や居場所の運営、地域交流の場づくりといった「継続的なアウトリーチ支援」を組み合わせることで、生活に困っている方や地域の“困りごと”の声を拾い上げています。

こうして発見された課題のうち、特に複雑化・複合化したケースや、まだ表面化していない潜在的な困りごとについては、「多機関協働事業」として対応しています。

この協働事業では、関係機関が連携して支援の方向性を検討します。

  • まずは地域支援会議にてケースを共有し、

  • 必要に応じて重層支援会議へと展開、

  • そこで地域資源とのマッチングや、継続的なモニタリングを実施しています。

このように「多機関」で「協働」して支援にあたることで、一人ひとりの課題に丁寧に向き合い、最適な支援につなげています。

また、活動の中で見えてきた個別案件については、その内容に応じて支援の方向性を整理し、地域資源の活用や、住民が主体的に取り組める「参加支援事業」へとつなげるなど、一体的な支援の展開を意識した取組を進めています。

アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

斜里町では、これまで支援が届きにくかった方々にも必要な支援が行き届くよう、「居場所(地域交流拠点)」の運営や訪問活動、相談支援を通じて、継続的な伴走型支援を実施しています。

また、関係機関との連携・協働を図りながら、一人ひとりの状況に応じた支援につなげており、支援を受けるだけでなく、地域の中での役割や参加の機会を広げる「参加支援事業」などへもつなげています。

地域のつながりの中で、誰もが自分らしく暮らし続けられる社会を目指して、今後も切れ目のない支援体制の構築に取り組んでまいります。

参加支援事業(障がい児等の居場所の運営)

放課後等デイサービス「COCAGE」について

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COCAGE(こかげ)は、斜里町で唯一の放課後等デイサービスです。児童福祉法に基づく福祉サービスとして、発達に特性のある子どもたちが、放課後や休日、長期休暇中に安心して過ごせる「居場所」を提供しています。

日々、子どもたちの「やってみたい!」という気持ちを大切にしながら、一人ひとりの個性に合わせた支援を行っています。

COCAGEでは、生活に役立つ学びや人との関わりを通して、お子さんたちの可能性が広がっていくことを願い、日々の活動を組み立てています。活動の場は教室の中だけにとどまらず、地域の人や場所とつながる体験を大切にしています。調理実習や職場体験、公園での活動など、地域ならではの環境を活かしたプログラムを通じて、子どもたちがのびのびと、自分らしく過ごせる場所づくりを目指しています。

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主な取り組み内容

  • 障がい児・発達障がい児とその保護者のための居場所づくり
    現在利用されている子どもたちは、ADHDやASDといった診断名がある場合もあれば、診断名はないものの発達特性が見られる場合もあります。放課後や長期休みの時間を活かして、子どもたち一人ひとりに合わせたサポートや学びの機会を提供しています。地域のなかで安心して過ごせる場所として、子どもたちの個性やペースに寄り添った支援を行っています。
  • COCAGE教室
    居場所機能を持ちながら、地域の暮らしに根ざした体験学習を支援しています。
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一日の活動例

子どもたちが興味を持つ活動を尊重し、発達特性に合わせたサポートを行っています。

  • 機械やスイッチを触る体験
  • 大人の模倣遊び
  • 外での活動や運動遊び

施設では、生活圏内にある店舗や公園、公共施設を活用し、季節を感じながらのびのびと過ごせる環境づくりを目指しています。

この記事に関するお問い合わせ先

民生部 地域福祉課 地域支援係
〒099-4117
北海道斜里郡斜里町青葉町40番地2
電話番号:0152-23-6644
ファックス番号:0152-23-6670

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